バーチャルミュージアム体験
- 2021.04.14
- その他
長引くコロナ禍において、アートの現場で注目されているバーチャルミュージアムを実際に体験してみました。
今回は、国立民族学博物館の企画展「アーミッシュ・キルトを訪ねて―そこに暮らし、そして世界に生きる人びと」の感想を書いてみたいと思います。
アーミッシュ・キルトは、1700年代頃にドイツからアメリカのペンシルバニア州に移住した人々の中から生まれたキルトのことで、無地の布をパッチワークし、大胆で鮮やかな色合いと細やかなステッチにより独特の幾何学模様が生み出されます。この独特なデザインから、20世紀後期にモダンアートとして注目を集めました。
無地の布の素朴な美しさはそのままに、まるで布に絵を描くようにあしらわれたステッチと大胆な配色のコントラストによって作品に立体感と動きが生まれます。柔らかな色味を合わせたキルトはこちらを包み込むような優しさを感じ、黒をアクセントに使った作品は迫力があり、圧倒されました。
鑑賞にあたっての操作方法はシンプルで、画面の隅にある縮小された展示場平面図の定点もしくはパノラマムービー上の矢印をクリックすると、その場所に移動します。また、マウスをドラッグすると展示場を見回すことができます。
クリックひとつで気になった展示物の前でズームイン、ズームアウト表示もでき、視点を上下に移動することもできます。視点の移動やズームの調節が細かにできるので自分の好みの鑑賞ができるようになっています。
初めは自分の思った位置や角度、高さに移動させるのが思ったようにいかないこともありましたが、操作がきわめてシンプルなのですぐに慣れて移動することができるようになりました。
慣れてしまえばどんどん前に進んで行き、上下左右に視点を変えながら壁に展示されている作品を鑑賞し、特に気になったキルトの前で立ち止まり、角度を調節しました。縫い目が細かく見たかったのでズームボタンをマックスまで押しました。かなり拡大されて布地のへこみや線まで確認できるものもありました。
デジタルなので、端末によって色味は実物と少し違ったりするのだろうかという疑問はありましたが、ひとつひとつ鮮やかで美しいので色彩も楽しむことができました。幾何学模様が神秘的で、色のコントラストもはっきりとしていて、この文化特有の美的感覚のようなものを感じ取れた気がします。
平面作品にしても立体作品にしても、遠目で全体像をとらえて感じ取ったものと、細部をじっくり観察して感じ取ったものは別物で、いろいろな角度から鑑賞する楽しさが味わえました。
他に鑑賞者がいないのですっきり見渡せて全体が捉えやすく、ひとりきりで鑑賞したい方にはかなり充実した見方ができると思います。導線通りに鑑賞していき、見落としがないので展示会のコンセプトや作者の意図だったり伝えたいことが掴みやすいかもしれません。
その展示会自体をひとつの作品として感じることができるでしょう。
デジタルなので実物の微細な立体感や素材感、また肌で感じるものは少なくなるかもしれませんが、このコロナ禍においてこれほど身近に簡単にミュージアムを体験できるなんてなんと嬉しいことかと思いました。
今さまざまなミュージアムがバーチャル展示を始めています。この機会にバーチャルの力を借りて、今まで出会うことのなかったアートと出会う旅を続けてみたいと思います。
国立民族学博物館